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Channel: 三太郎の日記
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アルコール発酵 その2

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酒造りには色々なパターンがあるが、大きく分ければ3つに分類できる。

一つはブドウ果汁などの糖分を、そのまま酵母菌でアルコール発酵させるパターンで
ワインやシードルなどがこれにあたる。

二つ目は、蒸米のデンプンを米麹で糖化させた後、その糖分をアルコール化させる方法、
言うまでもなく、これは日本酒。

三つ目は、できた酒を更に蒸留して、アルコール度の高い焼酎何かを作るパターン。


理論上の話はともかく、私は微細な酵母菌がミクロの力を発揮して、ブクブクと炭酸ガスを出しながら
頑張っている姿が大好きである。
その頑張る酵母菌の様子を体感するための必需品は、60ℓのホーロー鍋である。

私は、その大型のホーロー鍋を、20年前に3万5000円で買った。
雑貨屋に買いに行くと、オバサンが、18ℓの鍋が5000円だからまあ・・1万円くらいでしょう、
と言ってくれた。
そのことばに安心して、取り寄せしてもらうことになった。

いざ取りに行くと、オバサンは申し訳なさそうな顔をして、3万5000円です、と言った。
ギクッとしたが、ポーカーフェイスでお金を支払った覚えがある。
めったに出ない特注品だったようである。

さて、私にとっての初期の酒造りは、市販の濃縮果汁還元のリンゴジュースで行った。
ひと箱128円のリンゴジュースを50箱買ってきて、無造作にドボドボとホーロー鍋に入れる。
果汁の糖度は16°くらい。
その55%がアルコールになるわけだが、もう少しアルコール度を上げてやろうと思い、
白砂糖の1キログラム入りの袋を4袋入れたりする。
これで計算上、12°強のシードル(リンゴ酒)ができる。
最後に、個人輸入で買ったワインイースト(最近は東急ハンズでも売っている)を上からふりかける。

これで、酒造りの全工程は終了である。
後は、ホーロー鍋に蓋をして1週間待てばよいのである。

最初の1~2日は大した変化はない。
3日目から泡が断続的に上がり始める。
これはイーストが、糖をアルコールと二酸化炭素に分解しているのである。
4日目にはイーストの増殖が頂点に達して、ホーロー鍋の中心に泡の柱が立つ。
液面の中央が盛り上がり、泡が放射状に周辺に広がって行き、鍋内部に巨大な対流が起きるのだ。

この対流が、60ℓホーロー鍋の醍醐味だ。
小型のガラス瓶で作ったのでは、こうはならない。
コップにサイダーを注いだのと変わりなく、面白くもなんともない。

で、私はいつも仰向けに寝て、耳を冷たいホーロー鍋にくっつける。
シュワー、ジュワー、という音が頭の中に流れ込んでくる。
何とも言えず、幸せな気分になる。
30分くらいしていても飽きることはない。
そのあと起き上がり、樽職人のようにホーロー鍋を両足で抱え、顔を鍋の蓋にくっつける。
さっきのシュワー、ジュワー、という音が木魂のように聞こえてくる。

こういうことをしている私を、家族は不思議な表情で眺めている。
三太郎も最初は近寄ってきて、近くで丸くなって寝ていてくれたが、やがては大あくびをして
どこかへ歩いていってしまう。

5日目には、アルコール度が1度弱くらいに達する。
アルコール発酵特有の芳香が漂い始める。
私は、鍋の蓋をあけ、お玉でその発酵したリンゴジュースをコップに入れて、氷を投入する。
炭酸と芳香、そして甘味が融合して最高の味わいである。
家族を呼び集めて、皆にふるまう。
子供などは数杯もお代わりする。

6日目には、アルコール度は数度に達する。
7日目には10度を超える。
リンゴ酒は、完全に発酵するとカラくなる、という特徴がある。
その前に友人知人、隣近所、みんな呼んで、庭でバーべキュウパーティーをしながら飲み干してしまう。

趣味の酒造りの醍醐味とは、ざっと、このようなものである。

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